映画「告白」感想ともうひとつの「告白」

映画「告白」を観に行ってきました。ネタバレなし。

ある中学校、雑然とした教室。終業式後のホームルーム。
1年B組、37人の13歳。教壇に立つ担任・森口悠子が語り出す。
「私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」。
一瞬、静寂に包まれる教室。
物語は【告白】から始まる。


原作は2009年本屋大賞に輝いた湊かなえのベストセラー小説。
動機は監督が結構好きなのと、3週連続1位の話題性に興味を持ったので。
原作未読のため「先生の娘を殺したのは、誰?」のキャッチコピーでてっきり推理ものと勘違いしていたのですが、犯人が劇中のごく早い段階で明らかにされて「あれっ」とおもったら問答無用の復讐ものでした。どっかーん。




なんというか、まさに「衝撃的」と表現するのが正しいのかも。
冒頭の告白から複数の人物の一人称で事件の真相と展開が語られていき、その淡々としたモノローグに混じる狂気と強烈な映像の連続に一気に引き込まれ息もつかせぬ濃密な2時間。
劇場まで観にいく価値はある邦画だとおもいますが、様々な感情が交錯して手放しに「おもしろかった」とは言えない感じ。誰も救われず、誰も正しくない。R-15ということでグロテスクなシーンもあり、人によっては不快感を露わにしてもおかしくないとおもいます。主演の松たか子の演技力もさることながら、13歳の中学生のリアルで残酷で無邪気な描写が無性に不気味で恐怖。ラストも爽快ととるか陰惨ととるか意見が割れそうです。




監督の中島哲也氏の作品といえば「下妻物語」「パコと魔法の絵本」など、独特な世界観で派手な極彩色のにぎやかな印象が強かったのですが、今回はそれとまた違ったアプローチの映像美と演出が見事でした。
抑えられた暗い色調なのに、絶妙な照明や凝ったカメラワーク、細かいカット割り、効果的に挟まれるスローモーションの美しい映像、それに調和したレディオヘッドの音楽。見せ方が抜群に上手いです。ともするとただのダークで地味な映画になりかねない原作をここまでオサレ風に仕上げられるのは中島監督以外いないでしょう。やっぱ天才っすわー。


強いメッセージ性があり、色々と考えさせられる映画です。
観終わったあとはなんかもうぐったりです。あまり人におすすめはできません。




「告白」といえば

告白 コンフェッション (講談社漫画文庫)

告白 コンフェッション (講談社漫画文庫)


福本先生原作の方の「告白」も!文句なくおもしろい!よ!!*1

"聞いてしまった、あいつが…悪いのだ…!"


山岳部OBである浅井と石倉はたった2人で標高3000m級の尾張山を登っていた。だが、2人は猛吹雪に視界を失い、石倉は足を踏み外して転落しかけた際に片足を骨折してしまう。
そんな中、自らの死を覚悟した石倉は浅井に対して告白する。かつて事故死したとされる山岳部のメンバーの女性、さゆりを自分が殺したのだと。長年罪悪感を抱えて苦しんでいた石倉は告白を終え、晴れやかな表情をする。
その直後、吹雪が弱くなったのに気付いた浅井が辺りを見渡すと、そこには目指していた第3山小屋があった。浅井は石倉を背負って山小屋に入り、その中の公衆電話から救助を要請する。限られた通話時間の中、助けを呼ぶことには成功した浅井。


だが、助かった石倉の中ではある後悔が芽生えていた。
自らが殺人者であることを告白したことへの…。


福本伸行原作、かわぐちかいじ作画の豪華コンビで描く密室サスペンス。
二人きりの密室での手に汗握る展開に、どんでん返しもあって非常によくできています。作画が「ジパング」のかわぐち先生なのでどうも福本絵が苦手という方でも違和感なく、1冊にまとまっていて引き延ばしもないので、他の福本作品に比べてかなり読みやすくなっているんじゃないかと…おもい…ます…。


同コンビの作品でドラマ化*2もされた「生存―LifE」もおすすめです。
 
 

*1:これが言いたかっただけとも言える。

*2:2002年NHKで放送された4話完結ドラマらしいのですが私は観たことないです。